小児の運動療法について
小児のリハビリテーション中心の仕事から離れて2年ほど経った時のことです。 ずっと私の務め先に小児の運動療法を受けに通っていた母親とその知り合いの方から話があり、 小児の運動療法を京都ルネス病院で始めるようになりました
総合的な療育ではないために、運動療法と限定して話を進めていきます。 対象疾患は脳性麻痺・ダウン症・運動発達遅滞・異常歩行などです。 訓練開始当初はボイターを中心に行っていましたが、それまでに抱いていた疑問を少しずつ解消していく過程で考案した全く新しい訓練方法を行っています。
現在の訓練方法について
脳性麻痺の訓練方法は、一般的に知られているものを挙げると
ボバーズ法・ボイタ法・上田法・ドーマン法・動作法などがあります。
しかし理論、技術的な面で不透明な部分を多く抱えており、理学療法士がその部分をいかに察知するかという、
個人の能力に頼らざるを得ない部分が非常に大きいのが現状です。
また施設ごとに導入されている方法と異なるものを取り入れることが困難なのも問題です
脳性麻痺の訓練方法は、一般的に知られているものを挙げるとボバーズ法・ボイタ法・上田法・ドーマン法・動作法などがあります。
これからのアプローチ法に共通する最大の問題点は、運動発達の過程で観察される運動障害にも関わらず、
ずり這い・四つ這いを経て、歩行にいたる過程の筋機能の発達過程が解っていないという事です。
ずり這い・四つ這いの運動障害で、どの筋が運動障害の中心となっているのか、なぜまだ歩くことが出来ないのかを明確にする事が出来ないのです。
それぞれの理論が異なっているのは仕方がないとしても、運動障害の基礎についての共通した知識がない状態ではお互いに議論のしようがありません。
またどの方法も効果の再現性、有効範囲などについて確立したものはないのが現状のようです。
今の方法の出発点は、次のような疑問を抱いたからです。
脳性麻痺が皆似たような歩き方になってしまうのは、脳性麻痺という病的な運動発達に沿っているだけで、もともと歩ことが可能であった子が独歩をしているだけではないか?
実際は歩き方にもっとバリエーションがあっても良いのではないか?
そこで小児の運動療法の場では、当然の事として疑問を持たれることのない事柄について、一つ一つ考え直す事から始めました。
最初に発達過程における筋機能を調べ直すことから始めました。現在の方法の基礎となっているものです。
これにより発達の障害となる筋、発達の停滞の原因となる筋を特定して、その後の発達と比較してどのような機能が必要なのかを決定して、アプローチを行うことが可能になりました。
運動が改善すれば、対象となる筋も、求める関節運動も変化していきます。
このアプローチ方法を上肢にも応用して、作業療法も開始しています。
脳性麻痺とは
厚生省脳性麻痺研究班(1986年)の定義によると
「受胎から新生児(生後4週間以内までに生じた脳の非進行性病変に基づく永続的な、
しかし変化しうる運動・姿勢の異常で、その症状は2歳までに発現する。
進行性疾患や一過性運動障害、または将来正常化するであろうと思われる運動発達障害は除去する」
というように脳の障害であることは明記されています。
しかし学童期に見られる典型的な運動障害・関節の変形・拘縮を6ヶ月で観察される運動障害と同じように、
すべて脳の障害によるものとして考えているところに大きな誤りがあります。
6ヶ月位で運動障害が目立ってくる時期、3才以降に運動発達が止まり、関節の変形などの問題が前面に現れる時期、
このあたりを境界線と考えて、運動障害を違う面から捉えるようにすることが理論上必要であると思っています。
月齢と共に目立ってくる多くの問題すべて脳の障害からきているわけではありません。CT,MRIに異常が認められなくても、明らかに脳性麻痺の運動障害を示す子もいるのです。例外と片付けてしまう以上に多いと思っています。
運動発達が遅れる原因は、うつ伏せを嫌がる、大人しくて遊ばなくても泣かないから放っておいた、
早くから座らせたためによつ這いになるのが遅れたなどがあげられます。
1歳までの運動発達において、遅れている子と正常な子を比較するとその運動量は圧倒的な差になります。
歩けるか否かだけで見るのであれば、遅れはあくまでも遅れであって、異常運動は観察されるかもしれませんが歩くようになります。
しかし経験による発達という面を考慮すると、早い時期に発達の遅れを縮めるという事は大事になってきます。
しかし運動発達の遅れのみに対して、訓練をするのか、またいつから始めるのかを判断することは非常に難しいのです。
人により判断は極端に違ってきます。
小児の運動療法はイコール母親への指導なのです。
リハビリテーションを必要としているのですから、明らかに運動に関して問題点が存在するのです。
問題点を探すことはそれほど難しいことではありません。
しかしその児にこれから関わっていく上で、『こんなことが出来ている、こんなことをしようとしている』
と言うように良い点を見つけて母親と子供にアプローすると言うことが重要なのです。
良くなっていく芽を探すことの方が難しいのです。
自分の子供に障害があるかもしれないと言われ、心配でたまらないお母さんに少しでも前に向かって進んでもらうには、 本当にこれから治療者側が何をしようとしているのかを、 相手の理解できる言葉で伝えることが重要になってくるのです。 医師よりも関わっている時間も長いために、 脳性麻痺なのかどうか、歩けるのかどうか、という誰もが知りたがる問題の最終判断をこちらに求めてくることも多いのです。 どのような判断を下すにもそれまでのコミュニケーションの中で、いつ、どのように話すのかを判断しなければなりません。
総合的な療育ではないために、運動療法と限定して話を進めていきます。 対象疾患は脳性麻痺・ダウン症・運動発達遅滞・異常歩行などです。 訓練開始当初はボイターを中心に行っていましたが、それまでに抱いていた疑問を少しずつ解消していく過程で考案した全く新しい訓練方法を行っています。
小児の運動療法を行っている専門機関は限られているために、最初は紹介されてそちらに行っていたお母さん方が、少し余裕が出て周りを見ることが出来るようになった時に、 他の練習方法の存在を気にかけるようになり、噂を聞いてルネス病院に足を運んで来るというケースが今までは多かったようです。 しかし最近は2、3ヶ月の乳児が初めから訓練に来るというケースもあり、総合的な療育を行える体制が求められてきています。